
Claude × Houdini MCP 連携|自然言語で VFX シーンを作る手順
Claude と SideFX Houdini を MCP(Model Context Protocol)で接続すると、チャット欄に「破壊シミュレーションをセットアップして」と書くだけで Houdini 内にシーンが自動生成される。これを実現するのが非公式ブリッジツール HoudiniMCP だ。本記事では導入から実際の操作まで手順を追って解説する。
仕組みは 2 層構造で、Houdini 内部のソケットサーバがポート 9876 を監視し、Claude Desktop が起動するブリッジプロセスからの命令を受けて Houdini の Python API を呼び出す。ノード作成からレンダリング実行まで 168 種類の操作をテキスト指示だけで発行できる。
導入には Houdini 19.0 以上・Python 3.10 以上・uv・Claude Desktop が必要だ。習得コストの高い Houdini でも、深い知識なしにシーンのプロトタイプを素早く形にできるのが大きな利点で、本記事では導入から実際の操作まで手順を追って解説する。
目次 (13)
HoudiniMCP とは
HoudiniMCP は、Anthropic の Claude(Desktop 版)と SideFX の Houdini を Model Context Protocol 経由でつなぐサードパーティ製ブリッジである。開発者 capoomgit 氏が GitHub でオープンソース公開しており(capoomgit/houdini-mcp)、2024 年以降に急増した MCP 対応ツール群の一つに位置づけられる。
仕組みは 2 層構造だ。Houdini 内部で動作するソケットサーバ(Python スクリプト)がポート 9876 を監視し、Claude Desktop が起動するブリッジプロセスからの命令を受け取って Houdini の Python API を呼び出す。Claude から見ると Houdini は「話しかけられるスクリプト実行環境」として機能し、ノード作成・ジオメトリ生成・シミュレーション制御・レンダリング実行など 168 種類の操作をテキスト指示だけで発行できる(mcpworld.com の解説より)。
MCP 自体は Anthropic が策定したオープンプロトコルで、外部ツールを Claude に接続するための標準仕様だ。HoudiniMCP はその仕様に乗っかることで、将来的に Claude の機能が強化されても互換性を保ちやすい設計になっている。
Houdini が難しい理由と Claude がもたらす変化
Houdini はプロの VFX スタジオが映画・CM・ゲームのエフェクト制作に使うプロ向けツールであり、習得コストが非常に高い。ノードベースのプロシージャルワークフローは強力だが、パーティクル・流体・破壊シミュレーションの設定項目は膨大で、初学者が「煙が立ち上るシーン」を一から作るだけで数時間かかることも珍しくない。
さらに Houdini の Python API は豊富ではあるが、目的のノードを正しい順序で接続するまでのドキュメント調査だけでも一苦労だ。Claude を接続することでこの障壁が大幅に下がる。「10m 先で爆発が起き、破片が飛び散るシーンをセットアップして」といったテキスト指示に対して Claude が必要なノードを自動生成し、パラメータを設定してくれる。Houdini の深い知識がなくてもシーンのプロトタイプを素早く形にできるのは、プロ・アマ双方にとって大きな利点だ。
前提条件
次の 4 点がそろっていることを確認する。
- SideFX Houdini 19.0 以上(19.5 推奨)
- Python 3.10 以上(システムにインストール済みであること)
- uv パッケージマネージャー(MCP 依存ライブラリの管理に使用)
- Claude Desktop(最新版)
Houdini Apprentice(無料版)も技術的には動作するとされているが、Apprentice 固有の商用利用不可制限・FBX 書き出し制限など、Houdini 側の制約はそのまま残る点に留意したい。本格的な業務利用には有償ライセンスが必要だ。
インストール手順
uv のインストール
Windows の場合は PowerShell で以下を実行する。
powershell -c "irm https://astral.sh/uv/install.ps1 | iex"
インストール後に PATH へ追加し、次のコマンドで MCP ライブラリを追加する。
uv add "mcp[cli]"
Mac / Linux は uv の公式ドキュメント(https://docs.astral.sh/uv/)の手順に従う。
Houdini プラグインファイルの配置
capoomgit/houdini-mcp のリポジトリをクローンし、houdinimcp フォルダを以下のパスへ配置する。
- Windows:
C:\Users\<ユーザー名>\Documents\houdini19.5\scripts\python\houdinimcp\ - Mac:
/Users/<ユーザー名>/Library/Preferences/houdini/19.x/scripts/python/houdinimcp\ - Linux:
~/houdini19.x/scripts/python/houdinimcp/
配置するファイルは __init__.py・server.py・houdini_mcp_server.py・pyproject.toml の 4 点だ。
Houdini 内でサーバーを起動する
- Houdini を起動し、Python シェル(スクリプトエディタ)を開く。
- 初期化コードを実行して MCP サーバーをポート 9876 で起動する。
- 任意で「Toggle MCP Server」シェルフツールを作成しておくと、以後ワンクリックで起動・停止できる。
houdinimcp.jsonを Houdini の packages フォルダに置けば、Houdini 起動時の自動ロードが設定できる。
Claude Desktop の設定
Claude Desktop の設定ファイル claude_desktop_config.json の mcpServers に次のブロックを追加する。
{
"mcpServers": {
"houdini": {
"command": "uv",
"args": [
"run",
"python",
"C:/Users/<ユーザー名>/Documents/houdini19.5/scripts/python/houdinimcp/houdini_mcp_server.py"
]
}
}
}
パスは自分の環境に合わせて書き換える。設定後に Claude Desktop を再起動すると、左サイドバーにハンマーアイコンが表れ、Houdini ツールが利用可能になる。
実際にできること
接続後に Claude へ依頼できる主な操作を以下にまとめる。
- ノードの作成・編集 — 「球体を 5 個ランダムに配置したジオメトリノードを作成して」などの指示に対応する
- マテリアル適用 — 「オブジェクトに金属テクスチャを適用して」のような質感設定
- カメラのセットアップ — 「シーン全体を見渡せるカメラを置いて」
- 物理シミュレーション設定 — パーティクル・破壊(Voronoi Fracture)・煙・炎の初期設定
- レンダリング実行 — Karma / Mantra レンダーを Claude の指示でトリガー可能
- FBX エクスポート — ゲームエンジンへの書き出しにも対応
- Python 直接実行 —
execute_houdini_codeツールで任意の Houdini Python スクリプトを実行
skywork.ai の解説記事 によると、経験の浅いユーザーでもテキスト指示のみで複雑なプロシージャルシーンを構築できたとの報告が多く、プロトタイピング用途で特に効果が大きいとされる。
具体的な指示例
実際にどのようなテキストを Claude に送るか、シーン別の例を示す。
爆発・破壊系: 「ビルの一角が爆発して外壁が崩れ落ちるシーンを Voronoi Fracture で構成して。破片にリジッドボディダイナミクスをかけて」
煙・火系: 「煙突から濃い黒煙が立ち上るパーティクルシミュレーションをセットアップして。風の影響で右側に流れるように」
プロシージャルモデリング系: 「中心から放射状に広がる 12 枚の葉を持つ花のジオメトリを作成して。各葉にランダムに微妙な傾きをつけて」
いずれも Claude が Houdini の Python API を通じてノードネットワークを構築するため、Houdini の操作知識がなくても動作確認できる点が大きな利点だ。
Blender MCP との違い
Claude を 3D ツールに接続する手段として、Blender 向けの blender-mcp(ahujasid/blender-mcp)も普及している。両者の主な違いを比較する。
| 比較軸 | HoudiniMCP | BlenderMCP |
|---|---|---|
| 対象ソフト | SideFX Houdini | Blender |
| 主な用途 | VFX・シミュレーション・破壊エフェクト | 汎用 3D モデリング・アニメーション |
| 習得コスト | 高(プロ向け) | 低〜中(初学者にも普及) |
| ライセンス | 有料(Apprentice は無料・制限あり) | 無料 |
| MCP ツール数 | 168 種 | 60 種前後 |
映画・CM・ゲームのプロ品質 VFX を目指す場面は Houdini、3D モデリングやアニメーションをカジュアルに試したい場合は Blender が出発点として適している。用途に応じて使い分けるのが現実的だ。
制限と注意点
利用前に把握しておくべき制約を以下に整理する。
- 非公式ツール — SideFX および Anthropic のどちらの公式サポート対象でもない。ソフトウェアのアップデートで動作が変わる可能性がある。
- 同時起動は 1 インスタンスのみ — HoudiniMCP のサーバーは 1 セッションしか同時起動できない。
- 任意コード実行のリスク —
execute_houdini_codeは Python コードを直接実行するため、意図せず破壊的な操作が行われないよう指示内容を確認してから送ること。 - 複雑な操作はステップ分割を — 一度に大量の操作を依頼すると精度が落ちるため、シーン構築は段階的に依頼するほうが確実だ。
- OPUS アセット統合は別途有料 — アセットライブラリ連携機能には RapidAPI のサブスクリプションが必要となる。
- Apprentice 版の制約 — 無料の Houdini Apprentice を使う場合、FBX エクスポートや商用利用に関する Houdini 側の制約がそのまま適用される。
まとめ
HoudiniMCP を使えば、Houdini の専門知識がなくても Claude との対話だけで VFX シーンのプロトタイプを構築できる。必要なのは Houdini 19.0 以上・Python 3.10 以上・uv・Claude Desktop の 4 点だけで、設定作業は 30 分以内に完了する。168 種のツールが用意されており、爆発・煙・破壊といった本格的なシミュレーションからプロシージャルモデリングまで自然言語で操作できる点は、3D クリエイターにとって大きな武器になるだろう。
なお、同様の仕組みを Blender で試したい場合は本サイトの「Claude × Blender MCP 使い方|3D モデルを自然言語で作る手順」も参照してほしい。